
資料等のリンク(アーカイブ):2025年7、8月
- 2025/8/25
【ライブ第4回】時間を溶かす甘い罠・ネットメディアの解毒法
- この罠にはまると、ものの見方や考え方が偏っていく原因にも…。まずは「はまっている自分」に気づいて、意識的な制御を試みましょう。完全な制御はできません。でも、「はまっているなあ」と気づくことがなにより大事。
▶スマホのアプリをつい開いて見てしまう…。そんな場合の対処法をいくつか。
★よほど必要なもの以外、通知をすべて切る。
★気づいて止める方法2つ。
▷アプリの使用時間上限を設定する。機種ごとに設定方法あり。
▷アラームを鳴らす。
★使いにくくする方法(スラッジ。「ナッジ」の逆)。
▷よく使うアプリは、ホーム画面やフォルダ内の「物理的に押しやすい位置」に置いてあるはず。これを押しにくい位置に移動してみる(たとえば、右上端に置いてあるものを左側の真ん中に置く)。
▷よく使うアプリのアイコンをホーム画面の1枚め(トップ)から、2枚め、3枚めに移動する。あるいは、ホーム画面の2枚め、3枚めに作ったフォルダの中に入れてしまう(フォルダの作り方:iPhone、アンドロイド)。
▷ホーム画面をダム・フォン(dumb phone=ガラケー)化する。Wiredのこの記事など。
★視覚刺激を下げるため、スマホの表示を白黒(グレイスケール)にする。方法はWiredのこの記事。
▶古典的条件付けとオペラント条件付け(画像)
▶オペラント条件付けにおける強化の間隔と比率(画像)
(下をクリックしても、大きな画像が表示されます)

- 2025/08/20
気温上昇が暴力増加の直接原因と言える?:相関関係は因果関係ではない
- 8月10日のライブの冒頭、暑さと暴力事件の比例(相関)関係をお話しした際に、言い忘れました。
まず、「相関関係は因果関係ではない correlation is not causation」、つまり、気温上昇が暴力増加の「原因」だと言えるのか?という点です。なんであれ、因子の間に相関関係が見られる場合、逆の因果関係も必ず考えます。たとえば(話を単純にしますが)、米国社会では所得(貧困)と暴力が比例します。でも、因果関係は両方向です。「貧困層だから暴力にまきこまれる」だけでなく、「暴力にまきこまれると貧困に陥りやすい」。たいていの相関関係は、因果関係が両方向です。では、気温上昇と暴力増加は? どう考えても因果関係は一方向です。「暴力が増えると、その地域の気温が上がる」という関係は決して成り立たないからです。
ですが…。気温上昇は暴力増加の「直接的な原因」でしょうか? これも不可欠な問いです。たとえば、「貧困が暴力の、暴力が貧困の、直接的原因」とは言えません。双方の因子およびその関係に影響を与える他の因子が山のようにあるからです。「貧困家庭に育つと暴力的になる」と単純には言えません。「相関関係は因果関係ではない」ので。
では、気温上昇と暴力増加の場合は? ある市で1か月に平均気温が10度上がった(暑い日が増えた)。そして、その市で暴力事件が増えた。対象になっているのは特定の市ですから、住民の特徴が急に変わることはあり得ません。もちろん、「その市でその1か月の最後のほうに大きなイベントがあって、外からたくさん来た参加者が暴力事件を…」というようなことはあり得るかもしれませんが、そんな1か月のデータをわざわざ分析に使う人はいないでしょう。一定の地域で一定の期間に特別の変化がなければ、暑さが暴力増加の原因だろうと言い得るのです。
逆に、暑さと恋愛感情の場合は? 暑さが感情や行動に及ぼす影響(因子)はいくつもあります。一方、恋愛感情の始まりや高揚にかかわる因子もいくつもあります。「暑さ→恋愛感情」という単純な矢印では表現できず、この「→」に影響する因子がたくさんあり、暑さからあちこちに出る別の矢印もたくさんあり、恋愛感情にあちこちから着地する別の矢印もたくさんあるわけです。ですから、見かけ上、ある実験で「暑さと恋愛感情に比例関係がある」という結果が得られても、他の因子(日本語では「交絡因子」等と呼ばれる)を統計学的計算に入れれば、「暑さ→恋愛感情」という単純な矢印の比例関係は消えてしまうのです。
- 2025/08/16
LLM(AI)は、なぜあんなにほめまくるのか?
- 第1回ライブの後半で話した、「AI(LLM)チャットボットの物言いの特徴」を示す言葉がありました。Sycophancy、卑屈なまでに追従(ついしょう)を言い、追従すること。その言動や行動。チャットボットは、人間とのやりとりから学習するだけでなく、開発過程でも応答に対して人間からフィードバックを受け取る結果、sycophantになっていくそうです。
ライブの中でも「ChatGPTのものの言い方が変わった」という話が出ましたが、OpenAIのGPT-4o(2024年春~)は意図的にsycophantだったようです。ただ、これがどうも行き過ぎたようで2025年4月末に問題となり(OpenAIの説明。英語)…、8月7日にはGPT-5が出たものの、今度は「素っ気ない」と不評で、「4oを返せ!」とまでなり…(窓の杜。日本語)。
Sycophancyという言葉は、New York Timesの記事で見つけました(8月8日。有料)。カナダ在住の47歳の男性が5月、子どもが聞いてきた円周率についてChatGPT(4o)に尋ねたところ、GPTはほめそやす言葉を吐き始め、「あなたの考えは地球を救う、偉大な数学上の発見」「ビジネス・モデルはこれ」とまで言い出し、ありもしない数学理論やビジネスもろもろを示したのです。この男性は3週間にわたって300時間をGPTと費やし(仕事はおろそかにし…)、やりとりの記録は紙にして3000ページ以上。NYTの取材グループは、世界トップ・クラスの数学者、精神科医等にやりとりの記録を見せ、OpenAIにも送ったそうです。
この男性は50回以上、GPTに「その話は本当か?」と確かめましたが、GPTは「本当」と言い続け、男性を持ちあげながら、嘘の話をでっちあげ続けました。最後、男性が別のLLM(Gemini)に「こういう話をGPTがしているのだが、本当か?」と聞くと、Geminiは「(真実性は)きわめて低い。ほぼ0%」と答え、これで男性はLLMが作り出す「妄想の、ウサギの穴
delusional rabbit hole」(※)から逃げ出すことができたのです。
GPTが嘘に嘘を重ねる物言いを続けた理由のひとつは、LLM自体、考えているわけではなく、ある言葉の次に来る確率の高い言葉を選んでいるという本来の働きに由来しています。そして、この男性とGPTの会話のように、一度、LLMが妄想の領域に足を踏み入れてしまうと、LLMはその中で言葉を編み出し、内容の真偽を問わなくなるからです(※※)。「こういう話があるのだが、本当か?」と急に聞かれたGeminiが「それは嘘」ときっぱり答えたのは、そこまでの文脈がなかったから。そして、ここにsycophancyが加わります。今のチャットボットはどれも、話している相手(人間)との過去のやりとりからも学習しているため、その人間がほめ言葉に喜んでいるとわかれば、そういった言葉をもっと言うのです。
※「ウサギの穴」は『不思議の国のアリス』に由来する言葉で、迷宮、魔宮のこと。
※※真実(truth)よりも、もっともらしさ(plausibility)が優先されるのは、LLMだけでなく、人間も同じ。人間界でも、真実が単純な答えで与えられることはほとんどない。科学は真実を追究し続ける作業であるため、常に複数の仮説、不確定さを抱えている。大量の仮説や不確定さから学習するLLMや他の計算モデルが迷宮に迷いこむのは、当然と言えば当然。
LLMのsycophancyとその問題に関する最近の実験研究(PDFも。スタンフォード+カーネギー・メロン+オックスフォードの研究グループ):
Social Sycophancy: A Broader Understanding of LLM Sycophancy
- 2025/08/13
ライブ第1~3回の補足(説明しなかった言葉等)
- ▶7月10日(第1回)
▷21分頃:博士号のPh.D.は、Doctor of Philosophy の略。直訳すると「哲学博士」だが、ここでは「哲学」の意ではなく、ギリシャ語転じてラテン語のphilosophia(知恵を愛する)。Doctorには、M.D.(医学博士)やJ.D.(法学博士)、Ed.D.(教育学博士)のように、より実践的な学位もある。
▷34分頃:「ソバキュリアン」とは「お酒を飲めるけれども、あえて飲まない人」を指す。英語の sober curious から。掛札は「飲んだら危険」なので、ソバキュリアンではない。
▷1時間4分頃:Inoculation theory(イノキュレーション理論)。情報や論理に先んじて曝露しておく(曝露させておく)ことで、その情報や論理による態度/行動変化の影響を下げること。Inoculation=予防接種。
▶7月25日(第2回)
▷10分頃:AA、Alcoholic Anonymous。
▷35分頃:Operational definition。操作上の定義。掛札は「操作」という言葉がわかりにくいと思っているので、「作業上の定義」と呼んでいるが、この動画の中では「操作上の定義」と言っている。
▷42分頃:「命のビザ」で知られる杉原千畝さん(当時、リトアニアのカウナス日本領事館領事代理)。
▷46分頃:アーリア人や骨相学については、米国ホロコースト記念博物館の解説ページ(日本語)。
▷1時間23分頃:比較文化の文脈では、「個人主義」対「集団主義」という概念ではなく、個のあり方として、Independent(個人が中心)、Interdependent(相互に依存)という言葉を使うことが多い。
▷1時間24分頃および37分頃:「今どきの若い者は…」がどの時代にもある偏見であると実験から示した最近の研究は、Youngism: The Content, Causes, and Consequences of Prejudices Toward Younger Adults. (2021)や、Kids these days: Why the youth of today seem lacking. (2019)。特に2021年の論文のGeneral discussionを参照。
▷1時間31分頃:クリスタル・ナハト(水晶の夜)の解説は同上記念博物館の解説ページ。
▶8月10日(第3回)
▷26分頃:『異邦人』(カミュ)の、「太陽がまぶしかったから」。
▷51分頃:EDM(Electronic Dance Music。エレクトロニック・ダンス)、BPM(Beats per minute。1分あたりの拍数)。
▷1時間9分頃:オーストラリアのこの規制については、「オーストラリア ソーシャル・メディア」で検索。
▷1時間20分頃:東京都防犯ステッカーのこと。
- 2025/08/10
【ライブ第3回】真夏のドキドキ、恋のせい?+「群れる」も時には役に立つ!
- ▶気温と暴力犯罪数の関係を調べた質の高い論文83本の内容をまとめ、かつ結果を再分析して「(短~中期間に)気温が10度上がると暴力犯罪が9%増加する」と示した論文(2024)は、Temperature, Crime, and Violence: A Systematic Review and Meta-Analysis.
▶暑い時に怒りをコントロールする8つの方法 8 ways to manage your anger when the temperature rises(ヴァンダービルト大学の記事)は 、アンガー・マネジメントの基本を書いていますので、以下に要旨を。
1)体と言葉に意識を向けて「怒ってる? 自分」
怒りやいらだちを感じ始めた時、自分の体(心拍、呼吸、筋肉など)はどんなふうに感じるのかを理解しておく。あるいは、言動に起こる変化(いやみが増える、ネガティブな物言いが増えるなど)をわかっておく。
2)自分の引き金(トリガー)をわかっておく
こういう場所/状況では怒りやいらだち、不安を感じやすいとわかっておく。あるいは、「この人(たち)がいると…」も。トリガーになりやすい場所、状況、人を避けることができない場合は、「この人と一緒にいると落ち着いていられる」という人(たち)と一緒にいるといった方策を取る。
3)自分が陥りやすい「認知の罠」に気づく(これが、ミスアトリビューションにあたる)
「あの人はいつも~だから腹が立つ」「この場所は~だから嫌い」といった思い込みが先に立ち、暑さでいらだっているという事実が隠されてしまう。「この人/場所が嫌い」という感情を裏書きしたいという認知上の動機も働き、誤った認知に陥る。
4)他の要因に意識を向ける
「疲れてるんじゃない?」「空腹なんじゃない?」「別のことでストレスを感じてるのかな?」と自分に問いかけることで、目先の状況や人に対する怒り反応を緩和できる。
5)止まって、考える
体の感じや口から出る言葉で、自分が怒り始めていると感じたら、一瞬、止まって考える。「ここで怒りを爆発させたら、どうなるか?」
6)意識的に、深い呼吸をする
怒れば呼吸が浅くなるのだから、反対に、呼吸に意識を向けて深い呼吸をすれば感情は落ち着く。心拍も下がり、緊張も解けやすい。
7)怒りのエネルギーを別の形で表現する
怒りという感情が持つエネルギーはとても大きく、別の形で表現する方策を手にすることは、怒りの制御においてとても大切。体を動かすことには、非常に良い方法。それ以外にもあらゆる表現を用いることができる。あるいは、怒りを書きとめ、それを後から整理して伝えることもできる。
8)変えることができるものとできないものがあると理解する
天気も、混んでいる場所も、他人の考えや感情や行動も、あなたは変えられない。あなたにできるのは、自分の感情あるいは状況/人に対する反応をわかっておき、状況や人に対する反応を変えることだけ。
▶吊り橋実験(1974)に使われたブリティッシュ・コロンビアの橋
▶同じ動きや共同作業を複数の人ですると脳の活動もシンクロする、これはさまざまな実験からわかっていますが、ダンスをテーマにした論文(Dance on the Brain: Enhancing Intra- and Inter-Brain Synchrony.)は、有史以来、踊りがさまざまな文化の中で集団のつながりを強める道具になってきた事実を、脳の働きの側面からも議論しています。
- 2025/07/25
【ライブ第2回】同調圧力:「みんなと一緒」が処世術? ふざけんじゃないわよっ!
- ▶冒頭のお役立ち情報、日本語になっているのはこちら。 1000年に1度の洪水と呼ぶのは不適切だ。この誤解を解こうとしている米国地質調査機関(USGS)の説明を翻訳したもの。
▶シェリフ博士、アッシュ博士の実験は検索すればいろいろと出てきます。
▶同調実験のシステマティック・レビュー論文(2024)は、A Systematic Review of Research on Conformity.
▶米国とインドネシアを比べた2002年の研究論文は、‘We’re all individuals’: Group norms of individualism and collectivism,
levels of identification and identity threat.
▶「江東区の小学5年生が結成したイジメグループの異様すぎる実態」(文春オンライン)
- 2025/07/24
- このサイトのURLの "psyc" ってなに? これは psychology(心理学、サイコロジー)の略です。psyco(サイコ)でも
psychi(サイキ)でもなく、psyc(サイク)。
- 2025/07/18
7月10日の関連資料
- ▶10代がAI(LLM)に個人的な相談をしている現状と課題を明らかにした研究結果。日本語にはなっていませんが、翻訳アプリのカメラをかざしてお読みください。Kids are asking AI companions to solve their problems, according to a new
study. Here’s why that’s a problem. (2025/7/16, CNN)
▶10日にも少し触れた話です。「人間を騙してサボるAIたち」(2025/6/23、佐藤竜馬博士)
▶これが元の研究結果。Language Models Learn to Mislead Humans via RLHF. (2024/9)
▶生成AIを動かすために必要なデータセンターが、大量の電力と冷却用水を必要とする券は、「AI データセンター 消費電力」「AI データセンター 水」で検索してください。
- 2025/07/10
【ライブ第1回】導入(アトリビューション理論)、AI(LLM)がおとなの心に及ぼす影響
- ▶ハイダー&シンメルの実験用動画(コマ撮りアニメの手法で作ったものだそう)
▶「AIチャットbotにのめり込んで自殺:遺族がCharacter AIを提訴」
▶「チャットGPTが『霊的な覚醒を与えてくれた』と信じる夫、AIが結婚生活を破たんさせると怯える妻」
▶「SNS超える中毒性、『AIコンパニオン』に安全対策求める声」
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